母がいない家の中
幼い頃、母はよくパチンコに出かけていた。
気がつくと家にはいなくて、私と家の中の静けさだけが残される。誰も見ていないリビング、止まった時計のように動かない空気。
その中で私は「どうして一人なんだろう」と思いながら、ただ時間が過ぎるのを待っていた。
安心できる居場所がなかった
家は「安心する場所」ではなかった。
母がいても機嫌は不安定で、いないときは孤独が押し寄せてきた。
物音一つするだけで不安や恐怖が襲う。
どちらにしても心が落ち着くことはなく、
「ここにいていい」という感覚を持てなかった。
子どもらしく笑ったり甘えたりすることさえ、できなかった。
孤独を埋めようとした小さな逃げ場
安心できる場所がなかった私は、本や空想の世界に逃げ込んでいた。
登場人物の優しい言葉や、想像の中の温かい風景だけが、私を支えてくれた。
けれど本を閉じれば現実に引き戻される。
孤独は消えず、安心できない日々が続いた。
今だから気づけること
大人になって振り返ると、あの頃の私は「安心」というものを知らなかった。
常に不安と孤独の中で過ごしていたから、自己肯定感が育つはずもなかった。
けれど今は、ほんの少しずつ「安心できる時間」を自分で作れるようになってきた。
温かい飲み物をゆっくり味わうこと、信頼できる人と話すこと。
それは小さなことだけど、子どもの頃に欲しかった「安心」に近づいているのかもしれない。
コメント